データエンハンサーの戯言置き場

データサイエンティストを挫折した人がデータとアナリシスのエンハンスメントについて考える

はじめての方へ

このページは初めての方に向けた自己紹介とその他諸々のページです。よしなに。




自己紹介

某インターネット企業にてデータアナリストを経てデータサイエンティストになれず、データエンハンサー(自称)、アナリシスエンハンサー(自称)をやっております。 ブログの内容は個人の意見・見解であり、所属組織の意見・見解とは異なる事があります。




データエンハンサーとは

自称です。

lucies.hatenablog.com




↓それでは最新記事をどうぞ↓



待遇を良くすれば事故は起きないのか

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待遇と成果の関係

 

 

今日の結論

  • 待遇上げたからって成果が上がるわけじゃないぞ
  • そもそも成果が出ないと待遇上げる予算も出ないぞ
  • 人を教育しよう

導入

はい、どうもです。

なんか、事件がありましたね。やれ年収300万だなんだっていう。

www.itmedia.co.jp

 

この件について、TL上やら何やらでいくつか話題になってたのですが。

いくつか見たのが、

年収300万のやつにこんな重要な仕事させるな

とか

年収300万だから駄目なんだ、待遇を上げろ

とかってやつ。

 

このあたりは大枠としては同意だし、待遇がアレなのは本当にそうだと思うんだけど。まあだからといって待遇上げろ上げろって言っててそれで仕事やら会社やらがうまく回るのか、っていうとそういう話でもないよなあと思う今日このごろ。

 

ということでそもそも待遇ってどうやって決めるんだっけ、とか、待遇上げるとどうなるんだっけ、とか、メカニズムをちゃんと考えてみようと思います。

 

そもそも会社はなぜ社員の待遇を上げるのか?

待遇を上げる理由は究極的には2つだけ、

  • いい人材を社外から呼び込むため
  • いい人材を社外に逃さないため

しか無いわけです。そこに至るまでの道筋は色々あるんだけど。

 

いい人材とはなにか、というと、会社の目的に貢献する人材のことですね。

逆にいうと、会社の目的への貢献度合いによって待遇というのは決まってくる、と。会社じゃなくて行政とかでも同じだと思う。

 

これが大前提なので、待遇を上げたら当然いい人材は入ってくるかもしれないが、それ以前に組織の目的に貢献しそうだから待遇を上げる、という組織側の理屈が同時にあるわけです。

本来、組織と社員はwin-winのはずなんですよね。

 

ただこのwin-winというやつは厄介で、安定して回ってるときは良いのだけれど、一歩間違えると簡単にlose-loseになって負のループが回り始めちゃう。待遇が悪くなったら仕事に責任を持たなくなる、持たない人材が集まる、結果成果は出ないので更に待遇は悪くなる。

 

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負のループ

ので、lose-loseにしないために待遇だけじゃなくてもっと広い目線で考えましょうよ、というのが今回の記事であります。

そして広い目線で考えることで、会社に文句いうだけじゃなくて日々の仕事で我々は何をしないといけないのかを考えよう、と。

 

いい人材を手に入れる方法は待遇を良くするだけでは足りない

 

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いい人材を手に入れる

さて、先程言ったように、待遇を良くするのはいい人材を手に入れてキープするためであります。逆に、いい人材を手に入れる方法は待遇をよくするだけではないし、待遇を良くするだけでは足りないことも多い。

いい人材を手に入れる方法も2つある。

  • 社外から採用する
  • 社内の人を育てる

 

待遇を上げたら社外から良い人材が集まるのか?

待遇を上げるだけでは決していい人材が集まるとは言えない、というのはそうですよね。年収1000万でも、コンサルみたいに激務だからという理由で避けられたりする業界というのも結構ありますし、年収1000万でも会社の風通しが悪そうだから、とか、将来性がなさそうだから、という理由で避けられたりする。(これらには歴史的&文化的な背景があったりするんだけど)

 

この良い人材を集める力を「採用力」と名付けるとすると、この採用力というのは候補者を惹き付ける力と、その人を適切に評価する力に因数分解ができる。

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採用力の因数分解

こうやって見ると、「待遇」というのは会社の魅力の一つの側面でしかなくて、最低限の給与条件は必要だとは思うけど、それだけで採用力が上がるほど甘くない世界である。

 

待遇以外の会社の魅力

待遇以外にも魅力はあって、例えば最近は転職活動している人たちとカジュアル面談なんかすると絶対に、「リモートワークかどうか」というのを聞かれたりする。

そんな質問で、待遇(給与)以外の魅力で会社が判断されたりする。

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待遇以外の魅力例

こういう「待遇以外の魅力」がなくて待遇も低い会社が、「アットホームな職場です!」って、職場の雰囲気だけを全面に押し出したりするわけですね。

 

人を評価する力

更に、こちらの方が重要だったりするのだけれど、候補者がどれだけ優秀であっても、その人を適切に評価するのって凄まじく難しかっったりする。

これは本当にどうやってやったら良いのかわからなくてうまくやってる人の話を聞きたいんだけど、良い候補者が集まってきたからと言ってその中から適切な人を見極められるとは限らない。採用する側に見る目が無い、ということは往々にしてある。

 

特にITの部門だったりすると、ITとかよくわかりませんけどベンダーマネジメントだけは経験してました、みたいな人が部門のトップについてたりするわけです。そういう人が中心の部署だと、採用基準もベンダーマネジメント中心になって「開発」とはずれたスキルの人たちが集まってきてしまう。

 

という、会社側に採用スキルが無い、というのは往々にしてある。

(だからこそ、部門トップを張れる実績ある人間を社外から採用してきてその人に部署を立ち上げさせないとうまく回らない)

 

 

つまり、待遇を上げたとて、評価する側のスキルがなければ無意味だし、むしろ高待遇で使えない人材が入ってくる、高待遇ゆえに退職率も低いという最悪の無能な味方が入ってくるリスクがある。

真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である 

  (  ナポレオンの名言とされてる )

ということで、まずは人を評価する方法の方を洗練させる必要がある。大抵の日本企業だと、別に採用の専門家でもなければ採用のトレーニングを受けたわけでもない人が採用面接をするので、このリスクはかなり高い。(弊社もどうにかしたい)

 

社外からの採用はハイリスクハイリターン

ということで、社外から人を採用するのって、お金もかかるしポンコツを採用してしまうリスクもあるし、そもそも来てくれる人=母集団も決して多くない事が多いので、社内にいる人をきっちり教育していくほうが基本的にはローリスクで確実なリターンが見込めるわけです。

一方で社外からいい人材を採用できればハイリターンも臨めるので、

  • 社外から採用する= ハイリスク×ハイリターン
  • 社員を教育する = ローリスク×ローリターン

という書き方もできる。

ハイリスクハイリターン一発逆転策の追求は完全に衰退の始点なので、こちらを中心にするとあっという間に船は沈んでいくわけですね。

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ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階 - kawaguti’s diary

 

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

 

 

ということで、待遇だけ上げてもいい人材が入ってくれるとは限らないし、待遇上げたからと言って連続的に良い人材が入ってくるわけでも無い。

 

ので、重要なのは、まず教育制度をちゃんと整える、その先に待遇を上げて離職率を下げる、というのが基本的なパターンなわけです。

現場レベルで教育が行き届いてる組織は強い。

 

人材の質が会社のスケールにつながりにくい人月ビジネス

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いい人材が増えても成果が上がらない業態

 

ここはすでに色んな人が議論してるのでサラッと流しますが、件の流出事件に話を戻すと。

基本的に、いわゆる人月ビジネスのような、人貸しのサービスというのはこのサイクルが回りにくい構造になっている。

 

というのは、人材売りの企業は、人材の教育をしたら高く売れるが、教育しなくてもほどほどの値段で売れてしまう。特にSESみたいなところは常に人材不足なので、質が低くても買い手がついてしまう。

 

戦略コンサルみたいなところは同じ人月ビジネスでも質の低い人材は売れないので教育がある程度行き届くのだけれど。SESみたいなところはそもそもコードを書ける人材から不足しているような状態なので、「安く入荷した人員を安く売る」商売が成り立ってしまう。

 

更にこの業態に問題があるのは、

「たとえ質を上げて高く売っても会社がスケールしない」

ということ。生産性が上がらない。

100万円で売れる人材が150万円で売れるようになったところで、社員の給与も1.5倍になるので利益率は改善しにくい。コストを削れる部分がほぼ社員の給与しかない状態なので、会社がスケールする事がほぼ無い状態。

 

何かしらのソリューションを持っているベンダーは、その価値を上げ、多数の顧客先に納品することで利益率はどんどん改善しいてくのだけれど、人月だけを売ってる会社は利益率の改善が起きない。

ので、人材を育成するメリットがないのでわざわざ待遇を上げる必要もない。むしろ下手に待遇を上げると会社の利益率が低下していくし、投資対効果が薄い

 

これはSESに限った話ではなくて、例えばスーパーのレジ打ちや飲食店のホールみたいな、アルバイト中心に回っている仕事というのも大抵はそういう構造になっている。

 

つまり、成果=利益率が上がらない業態で待遇は基本的に上がらない

と思ったほうが良い、ということである。

(だからこそ最低賃金という概念が必要)

 

個人レベルでできる対策

  • 教育に力を入れていない企業には入社しない
  • 教育に力を入れていない企業には依頼しない
  • 孫受けがいる会社にはなるべく依頼しない
  • 安く買い叩かない

あたりができる事かなあと思います。

特に一番最後ですね、日本には古くから「安物買いの銭失い」とか「ただより高いものはない」とか、そういう言葉がありますからね。

値段で選ぶメリットはないですよね。

 

という感じで、社員教育を頑張ろうとおもったお話でした。