【読書記録】「劇薬」の仕事術
マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術
- 作者: 足立光
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/11/22
- メディア: Kindle版
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マクドナルドを復活させた人の本。
先日講演があって。見に行くにあたり、事前課題として読みました。大きく気になったのは3つ。
- P&Gやばい
- マクドナルド凄い
- ていうか総合力がやばい
P&Gやばい
P&Gってマーケの世界だとめちゃくちゃ有名で、元P&Gの人が世界中で活躍しているからP&Gマフィアという言葉があって。日本人のマーケ本読むととにかくP&Gが出てくる。過去にもこれとかこれとか紹介したけれど。とにかく組織としてちゃんとしてるんだよね。ビジョナリー・カンパニーにも挙げられているし。
激務とかも言うけど、それ以上に組織の文化がちゃんとしている。目標設定だったり、レビューや振り返りの文化だったり、人を育てる文化だったり、個人の習慣だったり。この文化が人を育て、組織を成長さえるとともに外に人材を輩出することになり、それによって人脈がうまれ更なる成長へとつながるという完全な正のループができている。
そしてP&Gが恐ろしいのはこの文化を百年以上世界中で維持し続けているところなのだろう。やばい。
マクドナルド凄い
著者の足立さん自身の成果として最も華々しいのはやはり日本マクドナルドの立て直し。本のタイトルも「劇薬」だし、派手な飲み会のエピソードなどもあって、わざと破天荒な印象を与えようとしているようにも見えるのだけれど、やっていることはすごくまともなんだよね。もっというと、まともになるまでやっているとも言えるかもしれない。
破天荒的な部分でいうと、結構会社のルールとかレギュレーションのギリギリのところを攻める、とかってことはしているのだけれど。ただ、そういうのも面白おかしく言っているだけで、中身は極めてちゃんとしている。
アイデアを大量に出して、大量のアイデアを色々な人にぶつけて、順番に実験して、全て振り返って考察して。そういうPDCAを同時に何周も大量に行っている。言ってしまえばそれだけなのだけれど、その全てを徹底的に高い質でやっている。それをやる組織を作る。短期間できっちり成果を上げる。継続するための組織を作る。すごくシンプルなんだけど、それを実行できるのが本当に凄い。
ていうか総合力がやばい
とはいえ、やはり激務飲み会でこれを実行してきた、というのはやはり時代の流れもあってあまり真似できないところだよなあとは思う。この働き方で大病をしなかったのは単なる偶然に過ぎないのだろう。
ただし、マクドナルドのキャンペーンは「怪盗ナゲッツ」とか「マクドナルド総選挙」とか、思いつきみたいに思える部分はかなりあるのだけれど。その裏側にきっちりとコンサル的なロジックがあるところは忘れちゃいけないよなあと思う。ともすればアイデアと派手な経歴ばかりがフィーチャーされちゃいそうだけど、その裏側にはちゃんとしたロジックがある。
ロジックがあった上で、感情に訴える部分であったり、行動力であったり、健康であったり運も含めて、全部積み重なって成果が生まれているという点で本当に凄いと思う。こういう「凄い人」の講演というのは何度も聞いてきたのだけれど、その中でも上位に入る凄さ。
ということで、とても良い本&講演でした。
GAFAの真似事をする人たち
最近増えてる気がするんですよね。というか増えてるんですよ、私の観測範囲では。
別にこれはGAFAに限った話ではないのだけど。競合をリサーチして同質化をしながら機能やサービスをアップデートしていくのは大事です。とても大事です。
でも、なんか真似方が間違ってることが結構あると思っていて。なんか表層的になってしまうんですよね。
なんで表層的になってしまうのかを考えると、戦略や戦術を真似するのは簡単だけどその根本にある価値観を真似するのは困難である、という事に尽きるのかな、と。
7Sってあるじゃないですか。マッキンゼーのフレームワーク。あれがすごく良くできているな、と思ったのがここで。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-12513.html
StrategyとかSystemは変えるのが比較的容易なので、他社の真似をするときってここから真似しがちなんだけど。
本来的には、Shared Valueがあって、そこにStyleやStaffが追随し、Skillが整ったあとに戦略がある、というか。ソフトの4Sのほうが変えるのが難しいのでハードの3Sをソフトに追随せざるを得ないのが実情なのだと思う。
これはビジョナリーカンパニー(ジム・コリンズ)でもほぼ同じことを言っていて、ビジョナリーカンパニーでは「適切な人をバスに乗せてからどこに行くかを決める会社が伸びる」と言ってるんですよね。
この順番を間違えて戦略戦術を真似すると、StaffとStrategyのミスマッチが起きた状態が生まれる。まずStaff が弱くなっていって、当然Staffが弱体化するというのはSkillも同時に弱くなっていき、経営基盤そのものが揺らいでいくのだなぁと思うのです。
Shared ValueやStyleを変えるのは10年単位の時間が必要になるので、普通の会社は変わる前にStaff が抜けて結果が出なくなり、社長が入れ替わるほうがスパンが短くなるのだろう。
そして厄介なことにこのソフトの4Sというのはバランスシートに書かれない資産なので、資産が目減りしていることに気づけないんだなあと思うんですよね。現場感の薄い経営陣には殆ど見えず、当然株主にはもっと見えない。頭数くらいしかわからない。
ということで、真似をするのは別にいいのだけれど自社向けにローカライズするのはとても重要で、ローカライズする際には自社のソフト資産をよく考えてからやらないといけないなぁというのが最近の学び。
泥舟の上でそんな事を考える今日このごろ、よそはよそ、うちはうち、隣の芝は隣の芝として生きていきたい所存。
【読書記録】誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性
誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性
- 作者: セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ,酒井泰介
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: 単行本
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お久しぶりになってしまいました。
本を読んでないわけでもないし、ブログネタが無いわけでもないんだけど、なんか当たり本を引かなかったり、ブログネタも推敲するほどの時間がなかったりでとても時間が空いてしまいました。
これも別にすごく当たりの本っていうわけでもないのだけれど、分析の本。ビッグデータ分析というが、中身の8割はGoogle検索の話。8割のうちの半分がポルノで、半分が政治の話。分析の本を買ったはずなのにずっとPornhubデータの話をされるのはちょっとつらいものがあった。
主旨としては、ビッグデータ≒検索データを見ると、アンケートとは全然違う結果が出るよ、という話。人はアンケートを答えるときに無意識に、客観的な事実よりも「こうありたい」あるいは「こうあるべき」というような回答をしてしまうことがある。前回の大統領選も、アンケート結果と実際の結果はずいぶんと違ったみたいな。
特に、エロとか差別みたいなセンシティブなものの例がひたすら列挙されていて、たとえばアンケートをすると人種差別はほとんど無くなったことになるけど、検索データ見ると「nigger joke」みたいな検索が未だに一定数ある、とか。
これが実務に活かせるのか、っていうと割と微妙ではあるのだけれど、でも調査方法によってバイアスはかかるよね、という話は結構あって。googleの検索結果をこの本では漁っているけれども、実際日本の検索データみるとGとYでも結構差が出たりとか。
まあアンケートだろうが検索データだろうが国勢調査ですらもサンプリングバイアスはどうしてもかかるので、そういう事象が起こるよっていうのを確認してみる意味では良いのかもしれない。
まあ別にあえて買うほどの本でもないかなあとは思うけど、事例としてこういうのもあるよっていうことで頭に入れておいてもいいかなあとも思う感じ。