給付型奨学金を増やしても奨学金問題が解決しない理由
こんなニュースがありましたけどね。
給付型を拡大したところで何も解決しないのです。
1.何故奨学金返済問題が起こるか
問題の構造自体はシンプル。
- 奨学金≒ローンを借りて大学に行った (投資した)
- けど返すお金(収入)がない (リターンが無い)
学費という投資に対し、収入というリターンが無い人が結局返済不能に陥るわけです。
2.返済するだけの収入がない人が何故生まれるか
言い換えると、何故リターン能力の無い人が生まれてしまうか。
丁寧に分類していくと、いくつか理由はあると思うんだけど、大きくは
- 返済能力が付くだけの勉強をしなかった (本人の問題)
- 返済能力を付けるだけの教育をしなかった (学校の問題)
の2つに大分される。
つまり、解決するには、
- 返済能力の無い人を助ける
- 返済能力の無い人を作らない
の二つが挙げられる。
後者(返済能力の無い人を作らない)は更に、
- 返済能力がつくように教育を施す
- 返済能力がつかない人には貸さない
あたりで分割可能。
3.給付型奨学金の特性
ここで、給付型奨学金について考える。
給付型奨学金というのは一般的に、
- ある条件の元で
- 申請者のうち
- 最も成績の優秀なもの
に与えられる。
この3つ目が恐らく盲点。
成績が良くないと貰えないのだ。
成績が良い、ということは一般には真面目に学問に励んでいる、ということ。
真面目に学問に励むということは、将来返済能力が身に着いている可能性が高いということ。
すなわち、この給付型奨学金は、確率的に、
返済能力のある人の負担を軽くするために作られるものである。
もちろん、「そうじゃない人もいる!」という反論に意味は無く、確率的な話。
なので、結果としてどうなるかというと。
返済可能な人=収入が高い人の借金が減り、
返済困難な人=収入が低い人の借金は変化しない。
あぁなんという格差。
4.解決策
給付型奨学金を成績の悪い人に渡す、というのはサボれば学費が浮いてしまうので本末転倒。
なので、上の問題構造から言うと、
- 卒業生の収入観点で、レベルの低い教育が施されている学校を是正する
- 低収入で奨学金を返済している人を救済する
のが主な選択肢となる。
前者(レベルの低い教育が施されている学校を是正)はまず、
- どの学校の卒業生の収入が低いか、というのを明らかにする(公表する)
のが一つ目。それがわからないと奨学金を借りてまで行く価値が有るか、というのが消費者=学生/保護者にわからないし、学校側にも是正したら良いのかどうかがわからない。
学生支援機構が滞納者の多い大学/学部を明らかにし、公表されるのが良いとは思う。
投資/リターンで分かりやすくランク付けとか出来るといいっすね。
その上で、
- レベルの低い学校の学生にはそもそも貸与をしない
というのがベター。最初から「借りられない」という認識を借りる側にも認識させる事ができる。
そうすることで、学校側もより学生の能力を正しく向上させようという気鋭が高まる。
後者(低収入で奨学金を返済している人を救済)に関しては既に案が出ていて。
とかね。
でもこれは結局先延ばしにしているだけなので、本当はちゃんと減ると良いんだけど。
他にも大学を是正する方法は色々あって、
卒業生の質が低い大学には助成金を減らす、とか。
いずれにせよ、「社会に出てやっていける」だけの人間を育てられないのであれば
そんな大学不要なんですよね。高卒を社会で育てた方がまだマシ。
無意味に大卒限定、みたいな求人も無くなると良いなぁと。
まとめ
課題を解決したければ課題をまず明確にして原因を切り分けないと解決策が的外れになる、という好例が、政治の世界にはバンバン転がっている気がしてならない今日このごろ。
頭のいい人はもしかして政治家にならないのではないかと疑いたくなるのでもう少しまともな議論をして欲しいですね。
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