【読書記録】AI vs 教科書が読めない子どもたち
話題になってたやつ。
著者は「東ロボくん」で話題になった新井先生。東ロボくん=東大入学を目指した人工知能ね。
正直、「AI本」として読むのであれば別にこの本である必要はなくて、松尾先生とかの方がちゃんとAIにフォーカスされてて良いと思う。
東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」
- 作者: 松尾豊,塩野誠
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 単行本
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AI vs~は、どちらかというとAIについて、というよりもAIと人間の「知性 」についての実験・研究の本。
ちょっと前にツイッターで
これとか話題になってましたが。読解とは何なのか、どういう読解がAIにできないのか。それに対して人間はどのくらいが読解できているのか。という、読解力をベースにした議論。
知識が中心の理科・社会、ルールベースの数学は人工知能でもかなり精度高く解けるのだけれど、英語と国語は抽象性が高くて人工知能には解けない、というのがこの本のスタート地点。なぜ言語は解けないのか、どういう読解ができないのか。というのがいろんな観点から考察されている。上のTogetterの問題はそのうちの一つ。
こういう読解能力って人工知能には確かに解けないけど、でも人工知能以下の人間っていっぱいいるよね、という話で。国語の偏差値が57くらいだったので、受験生の半分以上が人工知能以下の読解力しか持たない。
ホワイトカラーの仕事が今後AIによって奪われる、という話があるけれども。じゃあどの仕事が奪われるの、っていうと、こういう「読解力がなくてもなんとかなる」仕事であって、抽象と具体を行き来するような考え方ができるかどうかがかなり影響してくるんだろうなあと。
いろいろ考えることはあって楽しい本ではありました。
【読書記録】デジタル時代の基礎知識 『ブランディング』
デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール(MarkeZine BOOKS)
- 作者: 山口義宏
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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記事 書くのをだいぶサボっていたのだけれどちゃんと書きます。
山口先生。山口先生のブランディング本を読むのは2冊め。1冊目は
これ。
どちらも共通のところはたくさんあるんだけど、プラットフォームブランディングに比べると「基礎知識」と書いてあるだけあって、平易で簡単な印象。プラットフォームブランディングをもう少し噛み砕いた感じ、といっても良いかもしれない。
僕はいわゆるデジタルマーケの世界にいるのだけれど。ブランディング=大きな予算をかけて大々的なキャンペーンを張ること、という認識の人は未だに根強くいるのを感じている。ブランディングというのは本来そういう"手法"のカテゴリではなくて、本来は顧客の中にどういう意識を作っていくか、という"顧客"の話。
マーケの仕事をしている人たちですら、方法論をカテゴライズしたがるプロダクトアウトな発想に陥りがちなのは滑稽な話だなあと思う。
ブランディングには一貫性が大事だ、というのはどちらの本にも共通して書かれている事ではあるのだけれど。全然別軸で、ビジョナリー・カンパニーとか読んでても組織運営には一貫した理念が大事、ということが書かれてたりするんですよね。これ結構面白いなあと思っていて。要するに、それが組織の外に出るときにはブランディングという概念になり、組織の中に浸透させるときはマネジメントの一分野になっていく。
結局の所、手法や考え方は色々あるにせよ、自社の組織運営が一貫性をもって進められなければブランディングもうまくやっていく力は生まれないのだろうな。どちらも、「病めるときも健やかなるときも・・・」的な継続力が必要。特に病める時にこそ試される力なのだろう。
なんか本の感想とあんまり関係ない文章になってしまったけどブランディングは楽しい概念です。
【読書記録】ティール組織
読んだのは結構前なんだけど書くのをサボっていた。
結構話題になった本なので読んでみた次第。タイトルの通り、組織論。「次世代型組織」というものを解析した本。分析、という感じではなく、あくまで解析と考察。
読んでみてまず思ったのは、組織論の名著、ビジョナリー・カンパニーにすごく似たテイストだな、と思ったんですよ。で、これを読んだあとにビジョナリー・カンパニーの方も読み返してみた次第。
まずティール組織とはなにかというと、
こういう記事もあったりするのであえてここでは解説したりしませんが。組織の進化を7段階で整理してみたらその一番上がティール組織だった、という感じ。
ここで勘違いしてはいけない、というか、この本のユニークなところは、進化の段階の一番上だから一番利益が高いとか、そういう話ではないということ。前述のビジョナリー・カンパニーはすごく良くできた組織論なのだけれど、その根本のところは株価+アンケートで測っていて、株価が高く継続して発展し続ける組織について分析している。
一方でこのティール組織はなにかの指標で測るものではなく、もっと内面的というか、それが本当に良いんだっけ、という根拠にはちょっと乏しい。けれど、顧客に対して価値が高く、従業員の幸福度も高く、結果として利益もついてくるような。そういう組織について語った本。
個人的に印象に残っているのはオランダの地域医療会社、ビュートゾルフのエピソード。きっちり作業分析をし、工学的なアプローチで効率化していった医療会社よりも、あえてそういったアプローチを捨ててもっと人間的、内面的なアプローチを重視していったら結果的に業績も上がり顧客満足度も従業員満足度も高くなっていった、という。
僕は学生時代経営工学というやつをやっていて、一瞬医療業務の効率化の研究に手をだしたこともあったので。あえてそういう工学的なアプローチと逆をいくことで成果を上げる、という事例があったのはすごく腑に落ちたところでもあり。やっぱりあの大学院で学んだことは決して無駄ではなかったんだけど、やっぱ古いよなあというのが確認できたのが良かった。
この手の話は形こそ異なるけれど、遠藤先生の現場論とか
中竹監督のフォロワーシップとか
新版 リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは
- 作者: 中竹竜二
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2018/01/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こういう話の延長線上というか、もっと煮詰めていったような、そういうイメージも結構強いですね。
経営の効率化というのは、一昔前、フレデリック・テイラー以降の科学的アプローチでは人間を高度な設備のように扱っていたのだけれど。こういう人権の切り売りみたいな使い方はすべて機械に置き換えられていくわけで。今後はいかに人間を人間として、創造的に使えるか、というのが肝になっているのだろうな。
思うところはたくさんあるのだけれど長くなるのでこのあたりで。