【読書記録】測りすぎーーなぜパフォーマンス評価は失敗するのか
いつものように時間が空きましたが記録。
「なぜパフォーマンス評価は失敗するのか」というサブタイトルにもある通り、実績の「計測」が失敗するケース、計測ができないだけではなく、計測が害をもたらすケースの考察をしている。
著者は社会学者で、よくわからない国によくわからないKPIを持たされてむかついてこの本を書いた、という感じ。
教育とか医療とか、税金の投入される分野ではよくあることだけれど、税金を投入した分、その税金に見合っているのかという説明を求められる。その説明のためによくわからない数値による実績計測が行われるけど、それって意味ないしむしろ害だよね、という。
わかりやすいありがちな例でいうと、病院が「治療率」の向上を求められると、治療の難しい患者を受け入れないのが合理的な選択になってしまうけど、それって医療のあり方として正しくないよね、とか。医療経営状況を把握するためにベッドの稼働率で判断すると「経過観察」でベッドを埋めておくのが合理的だよね、とか。
教育なんかも、日本の教育もまさにそうなっているけど、教養を育む教育よりもテストで良い点を取るための教育になってしまう、とか。逮捕数をKPIにすると警察は大物よりも小物を沢山捕まえるし、犯罪数をKPIにすると軽犯罪を見逃しがちになる。
まあそういう例を色々と挙げながら、結局本質的な計測ってなんだろうね、というのを考察している。
僕はビジネスマンなので、経営におけるパフォーマンス評価の考察を求めてこの本を買い求めたのだけれど、そして実際に考察はされているのだけれど。本書の大半は、公共の中での考察であったのでちょっと期待はずれだった感。
むしろ、ビジネスでのパフォーマンス評価についてはどちらかというと肯定的で、「ビジネスじゃないんだからそういう評価やめろ!」という言い方になっているケースが多い。
とはいえビジネスでも、トップダウンでやるとうまく行かないよねー、なんて話がされている。
ビジネスに落とし込んだときに、実際KPI評価とか目標管理とかってどうするべきなんだっけ、という話は、最近の自分の仕事状況と絡めつつ色々とツイートしたので、別でまとめたいところ。
この本自体は正直、「問題がある!」「問題がある!」「問題がある!」「特効薬はない!」という感じの構成で結局もやもやして終わる感じ。もう少し成功例とか、対策についての考察は厚めに欲しかったところが不満。
ということで、今まさに課題があって解決したいものがある人におすすめか、っていうとそこまででもないかなー。KPIマネジメントとか、OKRとかそういうのを考えるときに、こうなると失敗する、というのは事前に意識しておいてもいいかなとは思う。
読んで損はしない感じでした。
【読書記録】THE MODEL
THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス
- 作者: 福田康隆
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2019/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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お久しぶりです。
ブログ更新が滞ってたのは転職活動とか色々してたからです。忙しかった。
ということで今回の本は久々のマーケ本。BtoBマーケの本というのは実は初めてかもしれない。著者はマルケトの社長。デジタルマーケの業界では知らない人はいないマルケト。オラクル、セールスフォースといった名だたるSaaS企業の営業組織を作ってきた人。
転職活動中に某日系SaaS企業を受けていたのだけれど。田町にあるお金が前に進む会社。そこがやはりSaaSビジネスを根幹としていて、営業プロセスの話とかそのプロセスに基づいたKPI管理の話とか、そういうところの話をかなりしたんですよね。でも僕はメディア側の人間なので全然ピンと来なくて、これ読んでだいぶしっくり来た。
月額課金系SaaSのビジネスと、広告メディアだったりクラウドみたいな従量課金系ビジネスとだと比重が違うのだろうけど。顧客のステージに合わせて営業しましょう、というのはまあそのとおりだし学べるところは多かったです。けど僕ら広告側からすると、広告代理店というスーパー権力があったりするので素直に取り入れるのはちょっとむずかしい。圧倒的にカスタマーサクセスに比重が偏る。
最後の章は営業組織の作り方、人の育て方でそこはそのまんま取り入れられそうだな、という感じ。よくある組織論ではあるのだけれど、まあそうだよねーという。
総じて言って、SaaSビジネスの関係者なら読んでおいて損はない一冊だと思いました。
プロジェクトマネージャーのフリをしたチェックリストマネージャー
久しぶりにアート・オブ・プロジェクトマネジメントを読んでいて、もう本当にこれこれこれだよ!っていうところがあったのですよ。
アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: Scott Berkun,村上雅章
- 出版社/メーカー: オライリー・ジャパン
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ある日、彼(上司)は私の部屋に入り、室内のすべての壁に貼られた、滑稽なほど巨大なチェックリストと表を見た後、私を座らせてドアを閉めました。そして、「スコット君、こういったものも悪くないが、君のプロジェクトってーのは君のチームそのものなんだよ。チェックリストではなくチームをマネジメントするんだ。そのチェックリストがチームのマネジメントに役立つのであれば、それは素晴らしいことだ。しかし、君のやり方ではすぐにチェックリストのマネジメントをするために君のチームを使うことになるだろう」と言ったのです。
これは結構、SIer的なプロジェクトマネージャーにすごく多いと感じているのだけれど、彼らはプロジェクトマネジメントをするための組織を作り、プロジェクトの全体を見てチェックリストを作り、進捗管理をひたすらやりたがる。
上記の引用は"プロセスと目標を取り違える"という章に書いてあって。チェックリストとかガントチャートを作るのはそれ自体が悪いことでは無いのだけれど、チェックリストを埋めること自体が目的になってしまっていることは多々あるのだよね。
以前の組織であったのだけれど、営業系の組織だったので、「クライアントへの提案件数」を目標にして、提案を何件したか、というチェックリストみたいな管理をしていたんですよね。そのチームは確かに、提案件数という目標は達成するために奮闘していたし、実際に達成できていた。
けど、中身を見るとひどいもので、理屈がめちゃくちゃの提案書がゴロゴロ出てくるわけです。明らかに間違った分析、営業秘密情報、コピペにコピペを重ねた雑な提案が大量にあるんですよね。
わかりやすい数値目標を立てて、クライアントの名前を並べてチェックリスト化して、それを埋めるだけのマネジメントになってしまっていた。果たしてそれで目標は達成できたとしても仕事が成功したと言えるのかどうかと。
目標管理が間違っていたという話も当然あるのだけれど、それと同時に、マネージャーの業務というものを過少に見積もっているのではないかと思うのだよね。マネジメントって、もっと複雑で泥臭くて成功方法なんてひとつもなくて、時と場合に応じて有機的に常に考え直さないといけないものだと思うのだけれど。
チェックリストマネージャーは、チェックリストを順番にこなすだけになってしまって本質を見失ってしまう。もちろんチェックリストやガントチャートが悪いわけではなくて、そういったツールは手段に過ぎないので、それらをなんのために使っているのか、というのが重要なんですよね。
チェックリストを埋める、という作業は、多分めちゃくちゃ達成感あるんですよ。ゲーミフィケーション的にもよく使われる手法だし。どんどん埋まっていくと多分めちゃくちゃ仕事した感出るんですよね。でも、なんのためにチェックリストを埋めているのか、というのを忘れると、気づいた人から嫌気が差して離れていくと言う状況が生まれる。
あれですよ、そういう本質に気づかない無能ばっかの組織をマネジメントするにはめちゃくちゃ有効です。あとはリソース管理だったり、優先度付けみたいな事をするときには有効。人月仕事とかには必須ですね。けど、そういう運用抜きに上から順にやっていきましょう、になったらアウト、それはチェックリストマネージャーです。
逆に、クリエイティビティの高い仕事には圧倒的に向かないんですよね。「アイデアを出す」とかってチェックリストに書くの馬鹿じゃないですか。そういうもんじゃない。
ということで、チェックリストマネージャー相手にするときは、そもそも何を目的にチェックリスト作ってるんですかね、というのは日々突っ込んでいかないといけないですね。「管理」って答えが返ってきたらなんのために何を管理してるんですかねって突っ込もう。
ということでアート・オブ・プロジェクトマネジメントも、読むたびに発見がある良い本ですね、という話。