【読書記録】なぜ大企業が突然つぶれるのか 生きるための「複雑系思考法」
なぜ大企業が突然つぶれるのか 生き残るための「複雑系思考法」 (PHPビジネス新書)
- 作者: 夏野剛
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/10/05
- メディア: Kindle版
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3冊目/2017年。
5年前の新書を、今更。積読消化。新書にありがちなんだけど、「なぜ大企業が突然つぶれるのか」に対する回答や突然つぶれないための対策は本書には書いておりません。突然潰れた大企業の例が書かれるどころか、突然潰れた大企業の社名すら1社も出てきません。という意味では所詮PHP新書か、、という感じです。主題はむしろサブタイトルの方、複雑系思考法の方に重きが置いてあります。
内容と関係のない個人的な話をするとですね。私がIT、特にWebの業界に身を置こうと決めた学生時代、就活中に何社か就活セミナーに行きまして。その中でも(当時)衝撃を受けたセミナーが、DeNAで南場さんが登場したセミナーと、ドワンゴの夏野さんが登場したセミナーでした。当時は若かった。その影響で夏野さんの本を買ったんですね、確か。
全体として、夏野さんをTwitterなりなんなりで(当時)よく見ていた人にとってはよくわかるであろう、"夏野節"という感じの内容になっております。出来るできないは別にしてとりあえずテクノロジー導入して効率化しよう、弊害は知らん、という態度。当時はそれが僕の目にとても魅力的に映ったんだけど、今はなんかいやいいけどそれ実現しないよね、と思うやつ。
世の中を「複雑系」と捉え、自社の外のパワーをうまく使いましょう、というのが前半の主題なんだけど、それって出来る人/会社相当限られるし鵜呑みにすると失敗するやつだなぁと思うのと。偉大なリーダースティーブ・ジョブズ!っていう態度も個人的に好きじゃなくて、ジョブズがそう簡単に出てきたら苦労しないわって思うわけです。
世の中に対する考察としては鋭いんだけど、一方でそれを真似しろ、というのはまた別の話だったりするので、まぁそういうものだと思って読んだ感じです。まぁ一種のエンタメ。という感じの本でした。
【視聴記録】イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
SFとかと違うんだけど良い映画だったので。
大学以降でコンピュータの授業を受けていれば、アラン・チューリングの名前を聞いたことのある人はたくさんいるだろう、コンピュータの生みの親のドキュメンタリー映画。
個人的には、アラン・チューリングの名前もチューリングマシン、チューリングテストといったチューリングの名前が冠されたIT用語(?)は知っていたし、チューリングがITの世界に対し、重要な役割を担っていたのは知っていたのだけれど。その背景やチューリングの人間性については全く知らなかったのでとてもおもしろかったです。
チューリング自身の重要な功績はいくつもあるのだけれど、その中の一つ。第二次大戦中の暗号解読にフォーカスが当てられている。チューリングは英国人であり、敵国のヒトラー率いる独軍の暗号解読を任される。その変人ぶりと、中々成果に結びつかなかったのもあり、何度もの解雇の危機を乗り越えながらも暗号解読とそれを通じた戦争への貢献をしていく物語。
暗号解読という機密性の高い任務ゆえに、世間にその功績が認められたのはその死後であったというあたりや、当時法律で処罰の対象だった同性愛者だったあたりもとても"物語性"の高い人生だなぁ、と。この2時間の映画の中では語りきれない功績のたくさんある人で、wikipedia読んでるだけでもワクワクする。
ドキュメンタリー映画を見たのは久々だったのだけど、良い映画だったなぁと。
【読書記録】FAILING FAST マリッサ・メイヤーとヤフーの闘争
2冊目/2017年。思っていたペースほど読めないなぁやっぱり。
米ヤフーの現CEO、Googleの元幹部マリッサ・メイヤーを主人公に、マリッサとヤフーの歴史を辿った本。原題は"MARRISSA MAYER AND THE FIGHT TO SAVE YAHOO!"。邦題はここに"FAILING FAST"という言葉が。この言葉自体はマリッサの信念のような言葉。座右の銘のような。本の中では、"失敗するなら早いほうが良い"という訳を与えられている。
この本自体はタイトルから想像したのとはちょっと違って、思ったほどマリッサマリッサしていない。マリッサ本人の伝記的なストーリーと、ヤフーの物語が同時に進行していき、最後の一章で混ざり合うような感じ。
前回ビジョナリー・カンパニーを読んだので、ビジョナリー・カンパニーの要件をヤフーが満たすのか、という点を考えながら読んでみたのだけど。ヤフーにはビジョナリー・カンパニーに必須の経営理念も無ければ、従業員を活かす仕組みについても書いておらず。合わせて、妙な納得感がありました。
ヤフーの物語だけ追うと本当に、ヤフーをどういう会社にしたいのか、という理念はマリッサが就任するまで出てこず、メディア企業となるべきか、テクノロジー企業となるべきか、ずっとその狭間で揺れている。従業員についての話題も、マリッサがFYI(全社vsマリッサの質問会)や、QPR(従業員評価制度)を導入するまで、つまり本の後半部分までほとんど触れられない。
一方で、マリッサの話でもあるので当然Googleの話も出てくるのだけれど、Googleのエンジニアの話は初期から結構出てきたりする。この1冊の中でそういう、GoogleとYahoo!という同時期にスタートした2社の違いがありありと見えてくるのは非常に興味深いな、という感想。
もう一つ感じたのは、この米ヤフーの失敗からYahoo!JAPANの方はとても学んでいるのだな、という感じがすごいする。マリッサが就任すると同時に米ヤフーではリモートワークを禁止する令が出ているが、一方で日ヤフーでは最近話題の週休3日も含め、働き方改革にかなり力を入れられている。米ヤフーの方針が全く定まらなかったのに対し、日ヤフーではメディアという自覚による宣言文を出していたり。
Yahoo!JAPANはじめ、米以外のヤフーに対する言及は中ヤフーの失敗くらいにしか触れられていないのだけど、自分の手元にある色々な情報と組み合わせると、見方が結構変わるなぁというのを強く自覚した本でありました。そういう意味で個人的にはとても新鮮だったな、と。それを抜きにしても、良質なドキュメンタリーなのではないかな、と。ベライゾンの買収問題が落着したら、この件も含めた続編が読みたいですね。